色素増感太陽電池の開発現状と今後の展望

昨年12月の先端光テクノロジー展での、韓氏(前:シャープ、現:物質材料研究機構)の特別講演「色素増感太陽電池の開発現状と今後の展望」を聴講しました。
火力発電並みのコスト(7円/kWh)を達成するためには、現在報告されている10%強程度の変換効率を15%以上にする必要があるとの事。韓氏の試算による達成可能な変換効率20%超からすれば達成可能な値だが、新規色素の開発次第の部分があるそうで、なかなか困難な道程だと思います。

太陽電池の変換効率に影響する3つの値(Jsc/Voc/FF)に関連する因子と、その改良の方向性は、色素増感太陽電池では以下の通り。

・Jsc(短絡電流密度:short circuit current)
※光収量効率が関連。
  改良の方向性①:色素の光吸収量の増大
           →長波長光に吸収のある色素の開発が必要。しかしBlackDyeを凌ぐ色素は未開発。
  改良の方向性②:膜内の光路長の増大
           →サブミクロンサイズのTiO2粒子を導入し、光を散乱させる事で特性向上。

・Voc(開放電圧:open circuit voltage )
※TiO2のフェルミ準位とヨウ素レドックス準位が関連。
  改良の方向性①:ヨウ素よりもレドックス準位の低い電解質を使用
           →高性能の材料開発が必須(ピリジンコバルト錯体ではまだイオン輸送特性が低い)。
  改良の方向性②:TiO2粒子表面でのキャリアの再結合を防ぐ
           →他の有機物でTiO2粒子表面覆う(ターシャルブチルピリジンやTHF)。
・FF(形状因子:fill factor)
※セルの直列抵抗が関連。
  改良の方向性:対極表面の酸化還元反応を促進(ラフネスファクター増大)、電解液の厚みを減少等。

レーザー機器や画像処理等、太陽電池とは毛色の異なる展示会での講演のためか、満席の割には質問もなく、少し残念でしたが、個人的には色素増感太陽電池の技術動向チェックが出来て非常に有意義でした。